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工場やビルはなぜ6,600Vの高圧で電気を受けるのか?損失の式とキュービクルの役割

公開日:2026-10-24 文:けーやん

工場やビル、大きなスーパーの裏にある、クリーム色の大きな箱。あれが「キュービクル」です。中では、電柱から届いた6,600Vという高い電圧を、僕たちが使う100Vや200Vに下げています。

では、なぜ工場やビルは、わざわざ危ない高圧のまま電気を受け取るのでしょうか。結論から言うと、電圧を高くすると電流が小さくなり、電線で熱として逃げる損失を大きく減らせるからです。この記事では、その理由を損失の式から確かめたうえで、高圧で受けるための設備(PAS・UGS・キュービクル)の役割まで順番に整理します。

ずんだもんずんだもん
高い電圧って危ないのだ。最初から100Vで届けてくれればいいのに、なんでわざわざ6,600Vで受けるのだ?
玄野武宏玄野武宏
理由は「数式」にあるんだ。電気を運ぶときの無駄が、電流の2乗で増えるからだよ。順番に見ていこう。

▲ この記事の元になった本編動画です。動画で流れをつかんでから読むと、さらにわかりやすくなります。

そもそも「高圧受電」とは?

50kWが一つの境目

家庭やお店のように使う電力が小さいところは、電柱の上の変圧器で100V・200Vに下げてもらった電気を受け取ります。これが「低圧」での受電です。

一方、契約電力がおおむね50kW以上になる工場・ビル・病院・学校などは、電柱を通ってくる6,600Vのまま電気を受け取り、自分の敷地にある設備で電圧を下げます。これが「高圧受電」です。電圧を下げる変圧器を、電力会社ではなく施設側が持つ形になります。

ずんだもんずんだもん
変圧器を自分で持つのだ!? そんな大きな機械を買ってまで、高圧で受けるのだ?
玄野武宏玄野武宏
そう。それでも高圧で受けるだけの理由があるんだ。まずは、電気を高い電圧で運ぶ理由から見ていこう。

なぜ高い電圧で送るのか?カギは「電流の2乗」

電流が大きいと電線が熱くなり、電圧を上げて電流を小さくすると熱の損失が減るイメージ

高圧で送る理由は、2つの式を並べると見えてきます。

同じ電力なら、電圧を上げると電流が減る

1つ目の式を見ると、同じ電力Pを送るとき、電圧Vを大きくすれば電流Iは小さくて済むことがわかります。電圧と電流は、電力を一定にしたまま「どちらを大きくするか」を選べる関係です。

損失は電流の「2乗」で効いてくる

2つ目の式がポイントです。電線の損失は、電流Iが2乗で効いてきます。電流が半分になれば損失は4分の1、10分の1になれば損失は100分の1です。

たとえば、100kWの電力を力率1で送る場合で比べてみます。

電流はおよそ33分の1になります。同じ太さの電線なら、損失は33の2乗で約1,000分の1です。電線で熱として捨てていたエネルギーを、ほとんど無くせることになります。

ずんだもんずんだもん
1,000分の1!? 電圧を上げるだけで、そんなに無駄が減るのだ!
玄野武宏玄野武宏
そうなんだ。だから発電所からはもっと高い電圧で送り、変電所で少しずつ下げて、街の中の配電線は6,600Vになっている。大きな電力を使う施設は、その6,600Vのまま受け取るのが一番効率がいいんだ。

高圧で受けると、施設側にもメリットがある

高圧受電は、電力会社の都合だけではありません。施設にとってもメリットがあります。

電気料金の単価が安くなる

高圧で受ける場合、電圧を下げる変圧器などの設備は施設が自分で持ち、保守もします。そのぶん、高圧の電気料金は低圧よりも単価が安く設定されています。たくさん電気を使う施設ほど、この差が効いてきます。

大きな電力を安定して使える

工場の生産ラインや大型の空調設備のように、大きな電力をまとめて使う設備も動かしやすくなります。停電に備えた自家発電設備と組み合わせやすいのも、高圧受電設備を持つ施設の強みです。

ずんだもんずんだもん
設備を自分で持つ代わりに、電気が安くなるのだ。ちゃんと得をしてるのだ!
玄野武宏玄野武宏
その代わり、施設の中で事故を起こさないように守る責任も持つことになる。次はその「守り」の話だ。

入口のPAS・UGSが「波及事故」を防ぐ

高圧受電設備の一番入口、つまり電力会社の電線と施設の設備の境目には、PASまたはUGSという開閉器を置きます。

施設の事故を、まわりに広げないための関所

高圧の電線は、同じ配電線にたくさんの施設がつながっています。もし1つの施設の中で地絡(電気が大地へ漏れる事故)が起きて、それが配電線側まで影響すると、変電所の遮断器が働き、同じ配電線につながる周りの施設や家まで停電してしまいます。これを「波及事故」といいます。

地絡継電装置付き(GR付・SOG付)のPASやUGSは、施設の中の地絡を検出すると、自動で施設を配電線から切り離します。自分の施設の事故を自分の入口で止めて、まわりに迷惑をかけないための「関所」というわけです。

ずんだもんずんだもん
自分のところの事故で、近所まで停電させちゃうのは困るのだ……。
玄野武宏玄野武宏
だから入口で切り離すんだ。高圧受電の設備は「自分の施設を守る」だけでなく「まわりを巻き込まない」ことも大事な役目なんだよ。

キュービクルの中は「受ける・守る・測る・変える・配る」

入口を通った6,600Vは、キュービクルに入ります。キュービクルは、高圧受電に必要な機器を金属製の箱にまとめた設備で、正式には「キュービクル式高圧受電設備」といいます。

中の機器は、電気の流れに沿って5つの役割で並ぶ

中の機器はごちゃごちゃして見えますが、電気の流れに沿って読むと、次の5つの役割の順番になっています。

  1. 受ける:高圧の電気を受け入れる(断路器など)
  2. 守る:事故のときに回路を切る(遮断器・限流ヒューズ・保護継電器など)
  3. 測る:電圧・電流・電力量を測る(計器用変圧器VT・変流器CT・計器など)
  4. 変える:6,600Vを100V・200Vに下げる(変圧器)
  5. 配る:施設の中の各設備へ分けて送る(配線用遮断器など)

昔は「部屋」、今は「箱」

以前は、専用の電気室に機器をむき出しで並べる「開放形」が主流でした。今は、必要な機器をあらかじめ箱に収めたキュービクル(閉鎖形)が広く使われています。設置する場所が小さくて済み、現場での工事期間も短くできるからです。

ずんだもんずんだもん
受ける・守る・測る・変える・配る。順番に読めば、ごちゃごちゃの箱もすっきりなのだ!
玄野武宏玄野武宏
そうだね。図面を見るときも、この順番で追っていけば迷わないよ。

屋外のキュービクルと、単線結線図の読み方

金属の箱でも、雨対策は欠かせない

キュービクルは丈夫な金属の箱ですが、屋外に置く場合は雨水の対策が欠かせません。中の変圧器などは熱を持つので、熱を逃がすための換気口(ガラリ)があります。ここや扉のすき間から雨水が吹き込むと、6,600Vがかかった部分の絶縁が悪くなり、短絡や地絡の事故につながるおそれがあります。屋外用のキュービクルが、雨の入りにくい構造になっているのはこのためです。

単線結線図は「検出・判断・切り離し」のセットで読む

高圧受電設備の設計図にあたるのが「単線結線図」です。記号の形を丸暗記するより、事故のときに、どの機器が異常を見つけ(検出)、どれが判断し、どれが回路を切り離すのかというセットで読むのがコツです。

よく出てくる「PF・S形」と「CB形」も、この「切り離す」役(主遮断装置)の方式の違いです。PF・S形は限流ヒューズと負荷開閉器の組み合わせで、受電設備容量300kVA以下で使われます。CB形は遮断器と保護継電器の組み合わせで、より大きな設備に使われます。

ずんだもんずんだもん
記号を全部覚えなくても、役割で読めばいいのだ?
玄野武宏玄野武宏
そう。「見つける・判断する・切る」がどの機器かを追えば、知らない図面でも筋道が見えてくるよ。

よくある質問

高圧受電についてよくある疑問をまとめました。

Q. 契約電力が何kWから高圧受電になりますか?

A. 一般的には契約電力50kW以上で、6,600Vの高圧で受電する契約になります。50kW未満は低圧での契約が基本です。

Q. 電圧を上げると、なぜ送電ロスが減るのですか?

A. 電線で熱として逃げる損失は3I²R(電流の2乗×抵抗)で決まるからです。同じ電力なら電圧を上げるほど電流が小さくなり、損失は電流の2乗に比例して大きく減ります。

Q. PASとUGSの違いは何ですか?

A. どちらも高圧受電の入口に置く開閉器です。電線を電柱から空中で引き込む架空引込ではPAS(高圧気中負荷開閉器)、地中から引き込む地中引込ではUGS(地中線用負荷開閉器)を使います。地絡継電装置付きのものは、構内の地絡事故を検出して自動で切り離し、波及事故を防ぎます。

Q. キュービクルとは何ですか?

A. 6,600Vを受けて100Vや200Vに下げるための機器(開閉器・遮断器・計器用変成器・変圧器など)を、金属製の箱にまとめた受電設備です。正式には「キュービクル式高圧受電設備」といいます。

Q. PF・S形とCB形の違いは何ですか?

A. 事故のときに回路を切る「主遮断装置」の方式の違いです。PF・S形は限流ヒューズと負荷開閉器の組み合わせで、受電設備容量300kVA以下で使われます。CB形は遮断器と保護継電器の組み合わせで、より大きな設備に使われます。

まとめ|6,600Vで受けるのは「電流の2乗」の損失を減らすため

ずんだもんずんだもん
危ない高圧で受けるのは、無駄を減らすためだったのだ! あのクリーム色の箱を見る目が変わったのだ!
玄野武宏玄野武宏
理由がわかると、記号や数字も覚えやすくなるよ。次は、事故が起きたときに機器がどう連携して守るのか、保護協調の世界をのぞいてみよう。

▶ 動画でも解説しています:第一種電工|工場・ビルが高圧受電する理由 / 電学チャンネルを登録する